茶封筒
彼女と私はおおっ広げに郵送物のやり取りはできない。
彼女にも家庭があり、私にも家族がいる。
その為、私たちは互いに郵送物は局留めにして送り合う約束をした。
先日、彼女から届いたメッセージに添えられたのは郵便物の追跡番号。
今日、その荷物を受け取った。
中身は私が前々から欲しいと言っていたコスメだ。
添えられた二言のメッセージ。私はそれで十分だった。
少し背伸びしたレッドのリップ。
彼女が私を忘れてはいない。こうして、贈り物をしたいと思うくらいにはまだ好きでいてくれるのだろうか。
そう思うと、私は嬉しくてたまらない。
本当は真っ先に見せたいのだ。
とっておきの化粧をして、新しい服と靴を下ろして。
彼女が贈ってくれたリップを塗って、会いに行きたい。
どう? 貴女が選んでくれたリップ、似合うでしょう?
そういえば彼女は笑ってくれるだろうか。
元々私が持っていたリップも、彼女が塗っているのを見て私が真似して買ったものだ。
今回も、彼女が使用しているシリーズのものをプレゼントしてくれた。
化粧ポーチに同じコスメが入っている。それだけで、どうも気分も浮かれてしまうものだ。
大分前にどこかで聞いたことがある。
試着室で思い出したら、本気の恋だと。
それはいったい何だったか。忘れてしまったが、私は未だに試着室で彼女の顔を思い浮かべる。
新しい化粧品を入手したときもそうだ。彼女に会いに行きたい、と思う。
私が目一杯着飾った時、一番見て欲しいのは彼女だ。
次それが叶うのはいつになるだろうか。
それでもその時は、このリップを塗って、彼女に笑顔でお礼を言いたいものだ。