身体計
食べることは好きだ。否、好きだった、とでも言っておこうか。
甘いもの、しょっぱいもの、酸っぱいもの。辛いものは少し苦手ではあったが、どんな食べ物も美味しく食べていた。体重のことなど、一切気にしないで。
今はもうあの頃に戻れないと思う。戻りたいと願うこともないが。それでも少しだけ羨ましく感じてしまう。純粋に食というものを楽しめていた事に。
例えば、ポテトチップス。以前は一般的なスーパーに陳列されている一番大きなものですら、無邪気に食べていた。しかし今ではどの菓子でさえも、成分表を見ずにはいられない。
ものを食べるときも、無意識下でカロリーを計算してしまう。1年近くダイエットを続ける中で、そんな悪癖が身に付いてしまった。
さて、ダイエットと言ったが、私はこの1年で20キロ以上の減量に成功した。体重が落ち切ったのは、今年の8月だったか。そこからキープを続けているが、いくつか問題が生じた。
一つは、食事を摂取する事が怖くなったのだ。食べることが大好きで、食いしん坊キャラだと周りも認識していた。1年前の私には想像も出来ないことだ。
その成果、と言っていいのか。今ではBMIも18.5を切り、WHOの指標から見ても痩せ型に分類されるところまで来た。
ここで二つ目の問題だ。ここまで自分を追い込んだことによる、攻撃性の増幅だ。
この1年で私は随分と神経質になった。勿論ダイエット以外にも要因は腐るほど有るが、瑣末な事にすぐ苛立ちを覚えるのだ。
何より一番嫌なのは、他人と自分を比較しがちな性格になってしまった事だ。恰幅の良い人間を見ると、ある種の嫉妬さえ感じる。自分の好きなものを好きに食べることが出来て羨ましい、と。
他人と自分。それは比較すべきものではない。ポジティブな面においても、ネガティブな面においてもだ。
「自分はこんなに頑張っているのに」それはただの承認欲求に過ぎず、人に押し付けるべきものではない。頭では理解しているつもりだ。
それでもどうしても他人と比べ、苛立ったり、落ち込んだりする。傍迷惑もいいところだ。
ダイエット。それは女子にとって切っても切り離せない存在だ。
しかしそのせいで元の人格を損なうようであれば、それはダイエットの失敗と言える。
どのような物事でも、やり過ぎは良くない。そう、身をもって実感した次第だ。